世代を超えるもの「三十光年の星たち」
2011-03-31


震災の前に読み始めた「三十光年の星たち」を読みおえました。

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(禺画像])宮本輝著「三十光年の星たち」

仕事が長続きせず借金を残して女に逃げられた30歳の仁志が、裏路地の奥に住む正体不明の金貸し老人佐伯に、借金の肩代わりとして債権回収の旅につきあわされるところから物語は始まります。

いつものことながら、書き出しからくぐっと物語に引き込まれます。少しの失敗も許されなくなった「今」を生きるものにとって、仁志の境遇を高見から見ることは出来ない、、その寄添うような視線が暖かいものを運んできます。
そして物語が進むにつれ、佐伯の厳しく鋭い言葉がなぜ仁志に強く温かく響くのか、、その秘密が明かされていき、仁志が人生のスタートを切るところで物語が終わります。

最初の旅の途中、佐伯は仁志に「現代人には二つのタイプがある。見えるものしか見ないタイプと、見えないものを見ようと努力するタイプだ。きみは後者だ。」と語ります。仁志はこの言葉の力に少しづつ気付き、それとともに自らの意思を強くして行きます。
これが、読み進むうちに読者自身にも強く響いてくるのです。

「きみは後者だ」

人生にとっては30年と言う長い月日を、誓いを立てるようにまっすぐ通そうとする心、そこに様々な知恵が集約されている、、。
一見厳しいように見えて、どこまでも前向きな読後感が、浮足だったものとは違う軽さの爽やかな余韻となっています。
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[読書]

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